青眼と僕と冒険と

僕とブルーアイズが歩いた軌跡のお裾分け

第二章

美しい。


『ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン』

 

それはひとつの衝撃でした。

まるで心を殴られたかのようでした。

いいえ、実際殴られたのかもしれません。

そしてこの時に、私の歩む道は決まっていたのかもしれません。

 

私はこのカードとともに生きたくなりました。

何故でしょう、このカードとともに時を過ごすことが、今の私には必要なことのように思えたのです。

誰かを愛すること。

このカードのように。

それがいずれ自分自身を救うのだと。

もう誰かを悲しませることのない、そんな立派な人になれる。

そんな気がしたのです。

 

何かから逃げたかったのかもしれません。

失恋の痛みから?

矜持を傷つけられた恥ずかしさから?

そう。

恥ずかしい。

恥ずかしかったのです。

私は自分が恥ずかしかったのです。

その恥ずかしさから逃げるための道具にしたかったのかもしれません。

ですが、何かに没頭しなければ、私は狂いそうだったのです。

私は旧友に連絡をいれました。

「遊戯王を教えてくれ」

旧友はすぐに応じてくれました。

「まずはカードを買いに行こう」

そしてすぐさま約束を取り付けました。

 

旧友に連れられて私は様々なカードショップを巡りました。

そしてショーケースに並んでいた構築済みの儀式青眼デッキを購入しました。

その中にディープアイズ・ホワイト・ドラゴンも入っていました。

この時、私の心に別の衝撃が走りました。

私の想像していたデザインではなかったのです。

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ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン



なんだこれ。胴の長いトカゲかよ。

 

ショックだったのです。

ものすごく。

作中ではあんなにも輝かしい姿だったのに。

実際にカードデザインを見ると、トカゲにしか見えなかったのです。

胴の長いトカゲに分不相応な5枚の翼…

 

なんか違うな。

 

とはいえ旧友には既にここまで手伝ってもらっているし、なにより

「よぅし。お前にルールを説明するなら…このデッキかな」

と、目の前でワクワクしながら決闘しようとしている友人に

「やっぱやめるわ」

とも言えず、こうして私は決闘者として歩を進めるのでした。